投稿日時: 2023/03/08 17:11
最終更新日時: 2024/06/30 04:58
ジャーナリストの渡辺真由子氏が,慶応大学から博士号を取り消されたことが話題になっている.
渡辺真由子氏の博士論文には,国立国会図書館の刊行物からの引用の範疇を超えた転載が多く見られ,これが剽窃という不正行為にあたるとして,今回の博士号取り消しに至ったようだ.
この事件について詳しく語ることはしない.だが,この事件をもとに「日本の博士号の信用が失われる」とか言ってる人たち,さすがにちょっと勘弁してもらえないか?
大学に所属する人間が書く論文というのは,企業でいうと,製品やサービスみたいなものだ.論文に不正が見つかったというのは,いわば製品に欠陥が見つかったようなものである.
食品メーカーが発売した商品に成分偽装が発覚すれば,当然その企業の信用は落ちる.今回の場合,論文不正が見つかったのであるから,慶応大学の信用が下がるのは仕方がないことに思える.
しかし,**「博士号の信用が下がる」**というのはいかがなものか.
食品の成分偽装を主導したのが実は課長であったとして,**「課長という役職の信用度が下がった」**と言ってるようなものである.
そんなの,他の会社の課長からしたら**「知らねえよ」**という話だ.
しかし,博士号の場合は,平気で同じような話がまかり通ってしまうのである.他の大学の博士からすれば,たまったものではない.
そもそも,著作権や特許などの知的財産権の侵害は,世界中でしょっちゅう起きていることである.これは学術論文の世界に限ったことではない.
どこの誰とも知らない奴がそうした不正を行うことなんて,第三者からすれば防ぎようもないことだ.それを防げるのは労働者や研究者を直接管理している企業や大学しかない.
せいぜい不正が出ないようにがんばればよいが,不正が出てきたらその責任はそちらでとるべきである.無関係な第三者を巻き込まないでおくれ.