投稿日時: 2023/03/08 17:11
最終更新日時: 2023/06/01 12:43
大学のレポートをよかれと思って人に見せたら丸写しされて自分まで処分された,みたいな話をたまに聞くのだが,それって理不尽すぎないかと思うのである.
これはまだわかる.試験中に他人に自分の答案を見せれば当然不正に加担したとみなされるし,同じ理屈だろう. しかし一方で,写すとわかって自分のレポートを他人に見せる人などほとんどいないため,この理由で不正とみなされる学生が出てくることは皆無であろうと思われる. 以降,この記事では,写すとは知らずにレポートを見せた場合に着目して話していくことにする.
レポートを丸写しにする行為は「剽窃」と呼ばれ,学問の世界では忌み嫌われる行為だ. 剽窃が不正とみなされる理由は,大きく分けて2つある.
1つ目の理由は著作権の侵害である. レポートといえども著作物の一種であり,適切な引用や著作者の許可なしに内容を無断でパクることは,著作権の侵害であるため,ダメだという理屈である. しかし,レポートの内容を使うことを「許可」していたとすれば,著作権の侵害にはならないであろう.
2つ目の理由は文書偽造である. 法律上の私文書偽造罪が当てはまるかどうかはここでは置いといて,「他人が作成した文章を自分が作成したかのように見せかける.」行為のことを指すと思ってほしい.(替え玉受験が近い.) なるほど確かにレポートとは学生本人にレポートを書ける技量があるかどうかを問う試験であるわけだ.ここで他人が作成した文章を提出することは不正行為とみなされても仕方がない.
では,写すと知らずにレポートを見せたら,結果的に丸写しされてしまった場合,見せた側の学生を処分することはほんとうに正しい裁量なのかどうかを改めて考えてみよう.
まず,著作権の観点から考えてみる. 創作物の著作権は創作物を創作した時点で発生する.レポートの場合はレポートを書き上げた時だろう. 書き上げたレポート,つまり自らの著作物を,自分の友人に見せる行為,これは何ら他社から制約を受けるものではないはずだ. つまり,著作権の観点では,レポートを他人に見せることは別段悪い行為ではないと言える.
次に,文書偽造の観点から考えてみる. レポートを見せた側は,相手がこれから文書偽造を行おうとしているということは全く知らないわけである. それなのに,ただ「参考のために」レポートを見せた学生側を,文書偽造へ加担したとみなすのは,流石に無理筋であると考えられる.
いずれの観点からしても,レポートを見せた側も不正行為とみなす,という裁量は,かなり行き過ぎていると言わざるを得ないだろう. レポートを写された人はむしろ著作権を侵害された被害者である.なぜ被害者を殴るのだろうか? 「見せた側も処罰の対象になりますから絶対にレポートは他人に見せないように」などとまことしやかに語られることが多いが,こんなものは正当に教育を受ける機会の剥奪であって,許されるべきことではないと思う. インターネットの片隅から,密かに反抗の意志を表したい.